私たちが血液検査を行う理由について

  こんにちは。星の動物クリニックの院長、星野です。
  みなさん、大切なペットに予防接種を行っていただいていると思いますが、 年に1度の予防接種は、ペットの健康診断をするのにベストなタイミングです。  

血液検査からは、ペットの健康状態がよくわかります。
今回は、血液検査をやる意義と何がわかるか、についてご紹介します。

「血液検査で何の病気がわかるの?」

人間と同じように、動物も採血でいろんな症状が分かります。
例えば、
・フィラリア(犬糸状虫症)
・腎不全
・糖尿病
・甲状腺機能低下症や亢進症
・クッシング症候群
・ホルモンの異常
・膵炎
・貧血
・脱水
・炎症

…いまざっと上げただけでも、以上の症状がわかります。

血液検査表の見方

さて、こちらが当院で配布している血液検査表です。

多くの血液検査表には、目安となる「正常値」が記入されています。この正常値より高かったり、届かなかったりしたときに直ちに異常となるわけではありませんが、値が正常値におさまらなかった場合は、獣医師と日頃の健康管理につき、よく相談をしてください。   「気をつけたい項目はこれ!」

特には
・GLU(グルコース、いわゆる血糖値)
・BUN(尿素窒素)
・CREA(クレアチニン)
・ALT(アラニントランスフェラーゼ)
・AST((アスパルテート)アスパラギン酸トランスフェラーゼ)
・ALKP(アルカリフォスファターゼ)
・GGT(ガンマグルタミルトランスフェラーゼ)
・TCHO(総コレステロール)
・TG(中性脂肪)
など。

GLUが高い場合、糖尿病の恐れがあります。ネコちゃんの場合、ストレスを感じると短時間でGLUがかなり上昇することがあります。普段は大人しいネコちゃんでも、いざ採血となると大きなストレスを感じます。
糖尿病か判断に迷う程度の血糖値の場合は、尿検査を同時に行い尿糖が出ていないかを確認したり、性格や経過をみながら糖尿病が隠れていないかを診断したりしていきます。

BUN,CREAが共に高いと、腎不全の疑いがあります。また、BUNだけが高い場合、腎臓に問題があるのではなく、例えば心臓に問題があったりする場合があります。
僧帽弁閉鎖不全症の好発犬種であるキャバリアやチワワの場合には特に注意が必要です。
さらに、肝臓の指標であるALT、AST、ALKPが高い場合は、肝臓や胆道系の疾患が疑われます。
また、副腎皮質ホルモンの過剰分泌により、多飲多尿、脱毛や腹部膨満、過食(肝臓肥大)などの症状が起こるクッシング症候群があるときなども、ALKPの値が高くなります。

ミニチュア・シュナウザーは、原因は詳しくわかっていませんがALTが高い値を示す子が多いです。
ALTに異常があった場合、3カ月に1回くらいの定期的な血液検査をオススメします。
また、シリマリン、サムイーなどの肝臓を保護する効果があるといわれるサプリメントを、獣医師と相談の上で取り入れるのもいいでしょう。

また、TCHOが上がっているときは甲状腺機能亢進症が、TGが上がっているときは甲状腺機能低下症が疑われます。
ただし、これはあくまで目安です。犬で甲状腺機能亢進症はほとんど見られませんし、逆に猫では甲状腺機能低下症はほとんど見られません。
脱毛が進んできたり、皮膚の状態が悪くなってきたり、またいわゆる「年をとったなぁ」と思われるような症状が見られるようになったら、甲状腺ホルモンの検査を合わせて受けてみるといいでしょう。

「低い場合に気をつけたい項目はこれ」

低い場合に気をつけたい項目は
・TP(総蛋白)
・ALB(アルブミン)
です。

ALBが2.0g/dl以下にまで低下してしまった場合、血管から外に水分が出てしまい、胸水(きょうすい:肺などの胸部に水が貯まってしまうこと)などが引き起こされる可能性が高くなります。
ALBは、アミノ酸(蛋白質)を原料として肝臓でつくられます。
ALBが極端に低い場合は、食べ物から蛋白質などの栄養素をうまく吸収できていない可能性や、ALBを作る肝機能がうまくはたらいていないなどの原因が考えられます。

また、赤血球数やヘマトクリット値が低い時には貧血が、白血球数が低い場合は好中球減少症やウイルス感染症、血小板の値が低い場合は血小板減少症などが疑われます。

水分が足りていない証拠!PCV、ヘモグロビン(赤血球)の数値も要注意

PCVやヘモグロビンの数値が高い場合、脱水、すなわち水分が足りていないことが考えられます。
ワンちゃんにも見られますが、水をあまり飲まないネコちゃんによく見られます。
ウェットフードに切り替える、冬はぬるま湯にしてみる、出汁を少し加えてみる、夏は氷を入れる、ペット用のウォーターファウンテンを使うなどして工夫し、お水をなるべく飲ませるようにしましょう。

また逆にこれらの数値が低い場合、貧血の状態になっていると考えられます。
貧血の原因は多岐に渡り、その後ろに大きな病気が隠れていることもあります。
貧血の傾向が見られたら、きちんと検査をして原因を突き止め、治療することが大切です。

血液検査はどのタイミングで行えばいい?

異常がない場合は、8歳くらいのシニアになるまでは、年1回検査すれば十分です。
予防接種時の健康診断で血液検査を行うのがよいでしょう。
8歳以上のシニアでも、健康上の問題がなければ年1回程度でかまいません。

その先は、半年に1回くらい検査を行うのがオススメです。
数年前から新しい腎機能マーカーであるSDMA(対称性ジメチルアルギニン)という検査項目が測定できるようになりました。
CREAは腎機能が75%以上低下して初めて数値が上昇するのに対し、SDMAは腎機能が40%程度低下したところで数値が上昇します。
すなわち、今までに比べて格段に早く、腎機能の低下がわかるようになり、慢性腎不全に対する早期治療が可能になりました。
シニアのネコちゃんはかなりの割合で腎機能が低下しています。
10歳を超えたら、SDMAを測定していくといいですね。

定期的な血液検査で傾向を把握しましょう

血液検査の「正常値」は、絶対的なものではありません。健康的なベストスコアは、その子によって異なります。
子犬の頃から健康診断と血液検査を行って記録することで、その子の傾向を把握できます。
弱そうなところがわかれば、食生活や日常生活の中で日々ケアしていくことが

できますし、毎年、血液検査を行っていると経過が分かる上、何か病気になった時も早期発見することができますよ。

定期的に来ていただければ、こちらで経過をみることができますので、定期的な検査を習慣づけましょう。

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