愛犬のかゆみ、自宅でどんなケアをする?       病院に行ったほうがよい目安は?

愛犬の皮膚がカサカサに

【参加いただいた飼い主さん:平沼和子さん】
《愛犬》ライカ君(ミニチュア・ダックスフンド/男の子/5歳)

■お悩み
・はじまり
 2、3年ほど前から、フケが増えたと感じるようになり、しきりとお尻のあたりを舐(な)めたり、ガジガジとかんだりする様子が見られるように。よく見ると、尻尾の付け根からお尻にかけて円形に毛が抜け、カサカサになった皮膚がはがれていました。

・自宅ケアで様子を見ることに
 獣医師に相談したところ、「おそらく環境要因性のアレルギーでは」。ハウスダストなどが要因と考えられるので、とにかく部屋の掃除をこまめに、ベッドのシーツも清潔にして、シャンプーの回数も増やすなどして清潔に努め、様子を見ましょうということに。

ライカ君の患部写真。皮膚がはがれ、丸く脱毛している(平沼和子さん提供)

・シャンプーや寝具を清潔にしたが……
 動物病院で受けたアドバイスに従い、月1回だったシャンプーを2回にし、寝具を洗う回数も増やすなど清潔を心掛けました。当初は症状が治まったかに見えましたが、しばらくして再び悪化。見ていると、体調が悪いときほどかゆみもひどい様子。

 また、カサカサのフケ状なので乾燥がよくないのではと考え、保湿タイプのシャンプーを使い、保湿スプレーなどを多用してケアしています。

・季節によって違いがある
 冬になると特に症状がひどくなり、乾燥した皮膚が裂け、うっすら血がにじむほど。そのため、まずは傷薬で手当てをして傷が治るのを待ち、あとはひたすら保湿に努めています。ただ、傷が治った箇所がかさぶた状になってひきつれるらしく、ふたたび舐めこわしてしまう。舐めることでかさぶたが柔らかくなって痛みは和らぐようですが、「雑菌が入るのでは」と心配。

 梅雨から夏にかけての湿度の高い時期は、指の間やわきの下、内股などにじゅくじゅくとした湿疹が。こちらもかゆみがあるようなので、やはりこまめなシャンプーで清潔を心掛けています。

膿皮症の可能性も?

 ライカ君の患部の写真を送ってくださった平沼さん。江角先生に上記のような症状を伝え、画像を見ながらお話を伺いました。

「直接診察していないので断定はできませんが、画像で見る限り、アレルギー性皮膚炎を背景とした膿皮症の可能性も考えられますね」と江角先生。

「膿皮症は人間でいうとニキビのようなもの。見た目が特徴的で、ライカ君の画像のように、患部が円形になるんです。症状が出始めた段階で治療すれば2、3週間で治りますが、放置すると5週間以上かかることもあります。膿皮症ができる背景にはアレルギー性皮膚炎が関与していることが多いです」

 発症する場所は1カ所とも限らず、同時に出るとも限らない。身体のあちこちに出た場合、長い間症状に苦しむことになってしまいます。

 膿皮症以外にも考えられることは、何でしょうか。

「皮膚糸状菌というカビの一種(真菌)もこのような症状を引き起こすことがありますが、皮膚糸状菌の場合は人間にも伝染します。ご家族に同様の症状がないとなれば、この可能性は低いでしょう。また、犬の皮膚に常在している毛包虫と呼ばれる寄生虫の増殖もかゆみの原因になりますが、ライカ君は毛包虫も駆除できる予防薬も服用されているとのことでその可能性も低そうです」

自宅ケアはこれでいい?

 ライカ君は特に冬になると症状が悪化するとのこと。そのため平沼さんも、ブラッシングのたびにフケが出ていないかを確認し、少しでも予兆が見られたらシャンプーをして、保湿剤やケア用スプレーを使ってケアに努めていると言います。

「アレルギー体質の犬は、そうでない犬にくらべて皮膚が乾燥しやすい傾向にあります。もともと皮膚の保湿力が弱い状態なので、積極的にケアして潤いを保ってあげる必要はあるでしょう」(江角先生)

 それを踏まえた上で、ライカ君へのケアは適切なのでしょうか。

「もしフケが乾燥によるものならば、今してらっしゃるケアでいいと思います。ただ、使う保湿剤やスプレーが合っているものなのか、使う頻度はどうかなど、きちんと把握してケアすべき、とは思います。保湿ケアが手探りでいま一つ効果が感じられないというのであれば、ケアの頻度を変えて効果を検証してみましょう。ブラッシングについても、どんな素材のブラシを使っているか。皮膚を傷つけやすい、硬いものを使っているようなら軟らかいものに変えてみるのも手です」

 そのほかにも、シャンプーを保湿ケア用のタイプに変えたり、室内の湿度に気をつけたりするのもポイントだとか。

「冬はどうしても乾燥しがちなので、湿度は40~50%ぐらいを目安に。また、ストーブやヒーター、ホットカーペット、コタツなどで乾燥しやすくなることもありますね」

 犬のフケについては、乾燥ばかりが原因とは言えないようです。

「もちろん乾燥した環境ならフケが出やすいのは当然なのですが、もうひとつ要因があるとすると、栄養状態ですね。日々の食事で、皮膚が健康を保つのに必要な栄養素が足りていない可能性もあります。具体的には必須脂肪酸や亜鉛、ビタミンEやAなど。皮膚を健やかに保つには外からのケアだけでなく、内側からの栄養補給が欠かせません。ダイエットさせるために不必要な食事制限を続けていると、フケが出やすくなることもあります」

 また、バランスの取れた食事をとっているにもかかわらずフケが出る場合も。

「その場合は体の内部に問題がある可能性があります。せっかく食事から栄養をとっていても栄養吸収がうまくいっていない。そんなケースです。フケの原因が乾燥なのか、栄養不良か、体内の他のトラブルか。まずは原因をつきとめて、適切な解決策を考える必要があります」

 この言葉に平沼さんは、大きくうなずいていました。

平沼さんとライカ君(Zoomのキャプチャー画面から)

「ライカは昔から、とても食が細いんです。食べることに興味がないというか、2、3日食べなくてもへっちゃらだったりする。あまりに食べないときは動物病院で病気からの回復期に与える栄養食をもらうほどなので、栄養が足りていないのかもしれません」(平沼さん)

 その場合には、前述のような栄養素をバランスよく含んだサプリメントなどを導入するのがよいようです。

動物病院を受診する目安は? 伝えるべき情報は?

 平沼さんはもう3年ほどの間、ライカ君に皮膚症状が出るたびに動物病院を受診しています。では、これまで犬のかゆみについて受診したことのない飼い主さんは、どんなタイミングで受診するのがよいのでしょうか?

 sippoが22年5月に行った、愛犬のかゆみについてのアンケートでは、飼い主さんたち約60人から疑問点やお悩みが寄せられました。「病院に行くにあたり気になっていること」として「受診したほうがよい目安を知りたい」が全124回答(複数回答可)中で33回答と、約4分の1を占めて最多となりました。

 江角先生は、「基本的に『普段と違う』『不快そうにしている』様子が見られたら早めに連れて来ていただけるのが一番です。しきりと舐める、かゆがる、という行動が2、3日続く、あるいは舐める範囲が広い、という場合にはぜひ相談を。早めに受診していただければ早く治せることが多いのですが、経過観察期間が長ければ長いほど、完治までに時間がかかる傾向にあります」と話します。

 そしてもうひとつ、飼い主さんたちが陥りがちなミスがあるといいます。

「それは、以前処方された薬の残りを飲ませたり、患部に塗ったりすること。一度開封した薬には使用期限がありますし、そもそも以前と似た症状が出たからと言って、同じ病気とも限りません。正しくない薬を与えれば副作用を含めて問題が起きる可能性もあります。古い薬を自己判断で使わないこと。これはかゆみに限らずお願いしたいポイントです」

 では、動物病院で獣医師に伝えるべきポイントや受診のコツはあるでしょうか? 江角先生にリストアップしていただきました。

  1. いつごろから始まったのか
  2. 患部はどのあたりか
  3. かゆがる行動にパターンはあるか(例えば散歩から帰ると、あるいは寝る前に、など)
  4. かゆがる前と後で何か生活に変化はないか(いつもと違うドッグランへ行ってから始まった、など)

「症状に気づいてから2、3日様子見する間だけでもよいので、愛犬の暮らしぶりについてちょっとしたメモや日記をつけておいていただけると助かります。何時に、どんなものをどれだけ食べたか。どこを散歩したか。いつもと違うものを食べさせたりしていないかなどの情報があると、獣医師は原因を探りやすくなります」

 また、今回ライカ君の画像を見せてもらったように、症状が出ているときの画像や動画を撮影しておくのも有効だとか。

「病院に来たときにはすでに症状がおさまっている、ということも珍しくありません。スマホで画像にしておいていただけると手掛かりになります」

夏と冬で違う症状、適切なケアは

 ライカ君の場合、冬は患部が乾燥して皮膚が荒れ、裂けて傷になるほどの症状に。夏場は冬とは別の場所(内股など)がジュクジュクとただれる、という症状に悩まされています。

 これから夏にかけては、まずは清潔が第一。「冬の乾燥には保湿ケアと同時に皮膚によい栄養バランスを心掛けて」と江角先生。

「冬は保湿ケアと同時に皮膚によい栄養バランスを心掛けましょう。フードを変えたりサプリメントを与えたりするときは、必ず獣医師に相談を。人間の食べているものを与えたい飼い主さんもいますが、基本的には総合栄養食と書かれているドッグフードであれば、必要な栄養素は足りているので、追加したい場合は獣医師にご相談ください。また、おやつなどもいつ、何を、どれだけ与えているのか飼い主さんが把握できていれば安心です。一番良くないのは、気まぐれに飼い主の食事のおかずを分けてあげたりすることです」

 これらのアドバイスに平沼さんも「これまでにもフードにちょっとアマニ油を垂らしてみるなどの工夫はしていましたが、サプリメントは本格的に検討したことがありませんでした。主治医に相談してみます」とのこと。

ライカ君(平沼和子さん提供)

犬のかゆみには 栄養・ケア・治療の合わせ技で!

 今回はライカ君を例にアドバイスをいただきましたが、何より大切なのは、日々の暮らしを飼い主がどれだけ把握し、コントロールできているかにかかっているようです。

「まずは飼い主が愛犬に、いつ・どんな症状が出ているのかを把握していただくことから。その上で、日頃と変わったことはないか・原因に心当たりはないかを探る。かゆみに限らず、違和感があったら原因を探索する習慣を持つことが大切で、そのサポートをするのが動物病院の役割。いち早く原因にたどりつくためにも、日頃からワンちゃんの暮らしをよく観察してあげると、違和感にも気づきやすくなります」

 現在、犬のかゆみの治療にはさまざまな選択肢がそろっており、かゆみそのものを改善するのはさほど難しいことではないのだとか。ただしそれは、原因がわかっていればこそ。

 だからこそ日々の観察が大切だということですね。

 ライカ君の観察を日々心掛けている平沼さんですが、動画や写真を撮るとき、ライカ君が隠れてかゆいところを舐めるという悩みがあるそうです。

「舐め壊してしまうので、不衛生な気がして見つけるとつい『あ!』と声を上げてしまって……。叱るつもりはないのですがライカは怒られていると勘違いして、別の部屋へ行ってしまうんです」

 江角先生は「難しいとは思いますが、そういうときはできるだけ、声をかけずに愛犬の気をそらす工夫をしてみてください」とアドバイス。例えば、しばらく声をかけずに舐めるのをやめたらおもちゃを見せて遊びに誘ったりするのも有効だそうです。

 かゆみというのはひっかいたり、舐めたりすることに始まり、炎症ができてかゆみの神経伝達が刺激され、さらに気になるようになるなど、負のサイクルになりがちでもあります。

「近年、獣医学領域においては、このかゆみのサイクルを阻害する内服薬や注射薬も出てきていますので、昔に比べるとかゆみ症状もコントロールしやすくなっているのです」と江角先生。かゆみに対応する治療には、外用薬(塗り薬)や内服薬、注射薬があり、症状に合わせて使い分けるそうです。

 皮膚によい食事、保湿や清潔を保つケア、そして適切な薬。これらを同時に行うのが、かゆみトラブルに向き合う大事なポイントです。

引用:sippo   https://sippo.asahi.com/protection/

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