犬の体表に寄生するノミやマダニの対策を行う飼い主さんは多いですが、犬の体内に寄生する寄生虫についてはどうでしょうか。愛犬の食欲が落ちた、下痢が続く、元気がないなどの体調不良のサインは、体内にいる寄生虫が原因かもしれません。ここでは犬の体内に寄生する虫の種類や症状と、人にも感染することがありますので、正しい対処法もご紹介します
犬の寄生虫とは?
寄生虫とは、ほかの生き物にくっつき、その生き物から栄養を取り込んで生きている生物のことです。寄生虫は寄生する場所が体外の「外部寄生虫」と体内の「内部寄生虫」に大きく分けられ、今回ご紹介する「内部寄生虫」は姿形や寄生経路、引き起こす症状などが異なりますので、詳しく説明していきます。
内部寄生虫の種類と症状
内部寄生虫は、腸内寄生虫とも呼ばれ、腸をはじめとする消化管に寄生していることが多い寄生虫です。ただ、消化管以外の場所にも寄生するので注意しましょう。
ここでは、内部寄生虫の犬回虫(いぬかいちゅう)、フィラリア、犬鉤虫(いぬこうちゅう)について解説しますが、ほかにも条虫(じょうちゅう)や鞭虫(べんちゅう)、瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)などがよく知られています。
犬回虫(いぬかいちゅう)
犬回虫は、そうめんのような細長い寄生虫で、経口感染や母子感染が主な感染経路になります。多くの場合、消化器官に寄生し、炭水化物やたんぱく質を栄養源にします。寄生されると犬回虫症を発症しますが、症状が出ないことも多いです。症状が出る場合は、下痢や嘔吐、食欲不振がみられます。
まれに肺付近に寄生することもあり、その場合は咳などの症状が出ます。
犬回虫は人にも寄生するため飼い主さんも注意が必要です。
フィラリア
フィラリアという言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。毎年、春から晩秋にかけて、または通年で愛犬にフィラリア予防の薬を飲ませている飼い主さんも多いはずです。フィラリアは蚊によって媒介される糸状の寄生虫で、成虫になると犬の心臓や肺動脈など心臓周辺の血管に寄生します。
フィラリア症は初期症状があまり出ませんが、心臓や周辺の血管に寄生するため、徐々に血液循環に障害が出てきます。疲れやすい、咳やむくみが出るのもフィラリア症の症状です。
さらに、フィラリア症は肺動脈がつまる肺動脈塞栓を引き起こしたり、血液の循環が阻害されることに起因する、うっ血性心不全を引き起こしたりすることもあり、命にかかわる重大な症状の原因になります。
犬鉤虫(いぬこうちゅう)
犬鉤虫は、犬の小腸に寄生する細長い寄生虫で、経口感染や母子感染、経皮感染が感染経路となります。腸にかみつき、血を吸って栄養を得るので、寄生されると貧血や下痢、血便などの症状が出ます。
犬鉤虫症の症状には、生後2週間くらいの生まれたばかりの子犬にあらわれる甚急性(じんきゅうせい)型、幼齢犬に見られる急性型、成犬に見られる慢性型の3つのタイプがあります。
3つの型に共通する症状は、貧血と体重の減少で、甚急性型や急性型には、下痢や粘りのある血便、食欲不振、腹痛なども引き起こします。子犬が感染することが多い犬鉤虫症は、重症化して命にかかわることも多いので注意が必要です。
どうして内部寄生虫に感染するの?
犬が寄生虫に感染する経路は様々ですが、内部寄生虫に感染する場合、経口感染と母子感染が主な感染経路となります。
●経口感染
寄生虫に感染した犬が、虫の卵や幼虫を含む便を排出し、それをほかの犬が口にして感染することです。便のほかにも、寄生虫に感染したミミズやゴキブリなどを口にして感染する場合もあります。
●母子感染
寄生虫に感染した母犬が妊娠、出産をした際に胎盤や母乳を介して子犬が感染することです。胎盤を通して感染することを胎盤感染、母乳を通して感染することを経乳感染や乳汁感染と呼びます。
犬の寄生虫は人へ感染する場合がある
犬が感染する寄生虫のなかには、人に感染するものもあります。解説した寄生虫のなかで、特に人への感染に注意が必要なのは犬回虫です。治療法が確立していないため、人が犬回虫に感染すると、治療が非常に困難だとされています。
人が犬回虫に感染すると、犬回虫は幼虫のまま体内を移動します。そして臓器に侵入し、幼虫移行症と呼ばれる症状を引き起こします。幼虫移行症のなかで、内臓に幼虫が侵入した場合を内臓移行型、眼に侵入した場合を眼移行型と分類します。近年、内臓移行型、眼移行型に加え、しびれや麻痺を引き起こす神経型や、アレルギーを発症させる潜在型といわれる新しいタイプも確認されています。
幼虫が侵入した臓器によって症状は異なりますが、内臓移行型では、発熱や倦怠感、食欲不振などが主な症状です。眼移行型では、網膜脈絡炎、網膜内腫瘤、ブドウ膜炎などの症状が現れます。
フィラリアや犬鉤虫も人に感染しますが、フィラリアの人への感染はあまり多くありません。また、犬鉤虫は経皮感染で人に寄生しますが、しばらくすると死滅します。皮膚炎を発症することもありますが、過度に心配する必要はありません。
寄生虫への対処方法は?
子犬は、母子感染による感染に加え、ペットショップで多くの犬と生活を共にするなど、寄生虫に感染しやすい環境にいることが多いです。
そのため、子犬を家に迎えた場合は寄生虫への感染に対し特に注意が必要です。予防や駆虫など適切な対処方法をとり、重症化を防ぐだけでなく、飼い主さんへの感染も防ぐことが大切です。
定期駆虫を行う
寄生虫は、早期に駆虫することで、重症化や人への感染リスクを減らせます。それには、虫を駆虫する薬を定期的に投薬する定期駆虫が効果的と言われています。ペット先進国とされるアメリカやヨーロッパでも、ペットの健康だけでなく、人への感染を防ぐという観点から定期駆虫が推奨されています。
内部寄生虫に対しては、生後2週目から生後3か月までは2週間おきに1回、生後3か月から生後6か月までは月1回、生後6か月以降は年4回の投薬による定期駆虫を行うと、母子感染していた場合でも駆虫でき、その後の予防にもなります。
感染のリスクを下げる
定期駆虫や予防のほかにも、感染リスクを下げるためにできることがあります。経口感染の場合、感染した犬の便やその周りの土から感染することが多いので、愛犬が感染していた場合を考え、排出した便は速やかに拾って持ち帰り、ほかの犬への感染を防ぎましょう。逆に、愛犬を守るために他の犬の排せつ物には近づけないようにしましょう。
人への感染リスクを下げるには、犬のトイレを清潔に保ち、掃除をした後は丁寧に手を洗いましょう。また、犬の毛についた便から感染することもあるので、犬を触った後も手を洗うように心がけましょう。
日々の衛生管理と定期駆虫で
愛犬と飼い主さんの健康を守りましょう
犬の寄生虫は多種多様で、引き起こす症状も異なります。感染経路も様々で、人へ感染する場合もあります。しかし、定期駆虫や感染リスクを下げる行動をとることで、感染を防いだり、軽症のうちに治療したりすることが可能です。愛犬とともに元気に暮らすために、寄生虫に関する正しい知識を持ち、衛生管理と適切な対処方法をとることが大切です。
監修:高柳 信子
引用:Honda Dog
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