暑い季節に怖いといえば「熱中症」ですよね。呼吸が荒くなったり、意識がもうろうとしたり、重度の熱中症は命を落としかねません。暑い季節でも愛犬と楽しくおでかけをするためのカギは、熱中症の症状や予防に対する正しい知識です。また、応急処置の方法は愛犬の命を守るためにも、ぜひチェックしてください。
熱中症とは?
熱中症は体に溜まった熱をうまく発散できず、体温が上昇することで血中の塩分濃度バランスが崩れ、脱水症状や血圧低下などを引き起こす疾患のことです。全身を毛で覆われ、太陽で熱くなった地面に頭が近い犬は、熱中症になりやすい動物と言えます。熱中症の症状はいくつかの段階に分けることができますので、ひとつひとつ詳しく見ていきましょう。
🐾初期段階にみられる症状
犬特有の初期症状として、激しいパンティングが見られます。人は汗をかくことで体表温度を下げて体温調節しますが、犬は汗をかくための汗腺が鼻や肉球といった一部にしかないため、口を開けて舌を出して呼吸をするパンティングによって体の熱を外に逃がします。
パンティングは日常生活や運動後にもみられる行動ですので、パンティングをすること自体は問題ありません。運動をしていないのに、パンティングが「いつもより激しい」あるいは「苦しそう」な場合には熱中症の疑いがあります。加えて、体に触れると熱く感じたり、落ち着きなくウロウロしたり、よだれを垂らし続けたりするのも典型的な初期症状です。
🐾中期段階にみられる症状
激しいパンティングなどの症状に加え、完全に横に寝転んでしまったり、呼びかけても反応が弱くなったりします。このとき、口の中や目をチェックすると粘膜の充血が見られます。
🐾重度な段階でみられる危険な症状
嘔吐反応が出る、泡を吹く、また体の一部が震える(痙攣)といった症状がみられると、かなり危険な状態です。放置すれば意識を失い、ぐったりとして自力で起き上がれなくなってしまいます。
また、歯茎や舌が白っぽい、あるいは舌が青黒く変色(チアノーゼ)してると酸欠状態であることを意味し、末期の状態です。子犬や老犬の場合は、初期症状から5分とかからず重篤状態となるケースがあります。
犬が熱中症になる主な原因
「高温多湿」の環境下に長時間いると、発症リスクが高くなります。したがって夏場は、エアコンがきいていない室内や車内などに愛犬を残すことは大変危険です。仮にエアコンをつけたり、窓を開けて風を通したりしていても、直射日光を避けられず水分補給もできない状態では、発症リスクが高まります。
人間にとっては快適な気温の春先でも油断禁物です。「まだ暑くないから大丈夫だろう」と考えずに、愛犬にとって快適な気温も知るようにしましょう。
また、散歩や運動に行くときは、気温だけではなく地面の温度も問題です。夕方になり気温は下がっても、日中50~60度まで熱せられたアスファルトの熱気はなかなか冷めないので、飼い主さんが地面を手で触り熱くないか確認をしてあげましょう。
熱中症になりやすい犬種
熱中症になりやすい犬種のひとつがチワワ、フレンチ・ブルドッグ、パグ、シー・ズー、ボストン・テリア、ペキニーズといった短頭種です。 いわゆる「鼻ペチャ系」の犬種は呼吸器官が比較的狭いため、パンティングによる呼吸や体温調節がうまくできない傾向にあることが原因です。
他にも、シベリアン・ハスキー、サモエド、アラスカンマラミュートなどの寒冷地を原産とする犬種は寒さに強く、暑さには大変弱い犬種です。
また、犬種を問わず肥満気味である、呼吸器や心臓、腎臓などに持病がある、また子犬やシニア犬といった体温調節がうまくできない犬もリスクが高くなります。
熱中症の予防法と応急処置
熱中症は最悪の場合、死に至ることがあります。そのため発症させないことが重要です。もし発症した場合には素早く正しい応急処置を行うことで、その後の症状や回復スピードに大きな違いがでます。
予防法① エアコンを上手に使う
最も心配なのは飼い主さんの目を離れ、犬だけで留守番しているときです。犬を室内で飼われている場合には、エアコンをつけておくことはもちろん、直射日光を避けるためカーテンは閉め、飲み水も十分用意しておきましょう。
外で飼われている場合は、十分な水分としっかりした日陰を用意します。犬小屋の場所は熱を溜め込みやすいコンクリートやアスファルトの地面を避け、風通しのよい場所に移動させましょう。時間帯により直射日光が当たる場所の場合は、日よけシェードやすだれなどで日陰を作ってあげましょう。
予防法② 散歩の時間
毎日の散歩は日中の暑い時間帯を避け、早朝や陽の沈んだ夕方以降を選んであげましょう。難しいときは短時間で散歩を切り上げるか、日陰の多い散歩コースを探すなど工夫しましょう。
早朝や夕方以降でも気温が30度を超えるような日は、無理に散歩へ出かけず室内で遊んで運動をさせるといった工夫もするとよいでしょう。
クルマで外出するときは、事前にエアコンをつけて車内を十分涼しくしておいてください。また、クルマのなかに犬だけを残していくことは、短時間でも避けるようにしましょう。
熱中症になった際の応急処置
熱中症はとにかく症状を悪化させないための迅速な応急処置が大切です。熱中症と思われる症状がみられたら体を冷やすために、すぐに風通しのよい日陰や涼しい室内に移動させてください。水を十分に飲ませて、素早く冷却グッズで体を冷やしてあげます。この時により効果をあげるため、首筋、脇の下、股といった皮膚の近くに太い血管がある部位に当てましょう。冷却グッズがすぐ手に入らない場合には、水をかけてあげるのも効果的です。
お出かけ先によっては水や氷が手に入りづらいこともあるので、飼い主さんが暖かいと感じる季節になったら、保冷グッズや水を入れたペットボトルを携帯することをおすすめします。
また、症状が落ち着いたから大丈夫だろうと思っていても、時間が経ってから体調を崩すこともありますので、少しでも熱中症の症状が見られたら動物病院へ連れて行くようにしましょう。
犬は熱中症になりやすい動物だからこそ、予防と応急処置が肝心
犬は熱中症にかかりやすく、かつ短時間で重症化することがあります。日頃から予防策を立てたうえで、もしもの際は初期の段階で対応できるように愛犬の様子をよく観察しましょう。また、冬の強い暖房で発症してしまうこともありますので、夏だけではなく年間を通して注意してあげましょう。
文・監修:PECO
引用:Honda Dog メルマガ